過去の人生を未来につなげる介護

過去から未来につなげる介護

2011年11月21日(月)

社会福祉援助技術現場実習簿を読んでいて、Fさんのことを思い出しました。Fさんはトイレ介助などのたびに「死にたい、生きていても皆さんの迷惑になるだけだ」と必ず口にされ、ちょっと扱いにくい印象がありました。「そんなことをおっしゃらずに、いつまでも生きていてくださいね」と言っても上の空。表情はどこまでも暗いままでした。たぶん死ぬことばかりが頭の中にあったのでしょう。

食事も「死んでいく者に無駄よ」と言ってあまり口にされず、ほとんど残してしまいます。Fさんに「生きていたい」と思ってもらうにはどうすれば良いのだろう・・・散々悩みました。施設には「ケース記録」というものがあります。そこには利用者の家族構成、家族関係、これまでの経歴、入所までの経緯などが書かれています。Fさんのことを知りたいと、ケース記録を読み直してみることにしました。

Fさんは中学校の英語の先生だったんですね。早速トイレ介助の時に「Fさん、生きるってVery good!なことだと思いませんか?」と話しかけてみたところ(すみません、そのぐらいの英語しか使えなくて(苦笑))、急に表情が活き活きとされ「Veryは大変、goodは良いという意味ですよ」と反応される。それからはずっと英語の話を続けられ、誰とも口をきかずにいたFさんが、他の利用者とも談笑されるようになりました。その変化には本当に驚きました。

今は介護なしには暮らせないという方も、これまでには長い長い人生の歴史があるのですね。「今」という「点」だけを見て介護をしようとしていた自分の間違いに気がつきました。人生は「線」なのです。どれほど高齢であっても、これから先もその線は続いてゆくのですよね。過去を未来につなげてゆくこと、それが福祉の基本である「人格を尊重する」ということなのかも・・・と、今気がついても遅かった?


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