90歳過ぎて家族と暮らすということ

長寿はめでたい?

2015年08月02日(日)

90歳を超えるというのは本当に大変なことですが、90歳以上の高齢者の方たちにお会いすると、特別なことをされてきたというわけではなく、まさに持って生まれた「寿命」が命を支えているという気がします。大きな病気を持っていても、病気とうまくつきあいながら長寿を保たれている方もいますし、病気という病気をしたことがないという、健康そのものの方もいます。「ご家族が大切にしているから長生きしているんだろう」と思うかもわかりませんが、そして、私もこの仕事をするまではそう思っていたのですが、そうとばかりはかぎらないようです。

先日、92歳の誕生日を迎えたばかりのY江さんは、夫と30年近く前に死別。長男一家とひとつ屋根の下で生活していますが、夫亡き後、家族とはほとんど口をきくこともなく、一人、部屋に閉じこもって生活してきました。出入りは庭に面している自室の履きだし窓。昼間は家族が働きに出ているので、その間に、風呂に入ったり料理を作って食べたりしていました。若いうちはそれでもなんとかなっていましたが、年とともにできないことがどんどん増え、最近は風呂場を排泄物で汚してしまったり、ごはんが作れず、食べないで過ごす日々が続いたりという状況でしたが、ご家族は眉をひそめるだけで手伝う気はありません。思い余ったY江さん、ついに自殺を図ってしまいました。

一命はとりとめましたが、家族の心は以前よりも離れてしまい、一緒に暮らすための努力と時間を、老人ホーム探しに向け、ついに、安価な有料老人ホームをみつけてY江さんを入所させてしまいました。入所したらそれきり、長男が訪問することはなく、Y江さんの部屋を片付けて、せいせいと自分の部屋にしています。

Y江さんのことをお気の毒に思う反面、誰一人理解者のいない家族の中で孤独を味わうより、職員に大切にしてもらえる今の環境の方が、Y江さんにとっては幸せなのかなと思ったり。長生きすることで、人生の楽しみを一日でも多く味わえるなら本当に幸せだと思いますが、どうも、そうはいかないケースの方が多いようです。


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