施設に預けた母が振った手

母の痩せた手

2011年06月21日(火)

母のことを思うとき、一番最初に思い浮かぶのは「手」です。女性にしては大きな手でしたが、その手も最晩年にはやせ細り、骨に皮がついているだけになってしまいました。私は装飾品が好きでイヤリングや指輪、ネックレスをしょっちゅう身につけていましたが、母はあまり好きではなかったようで、父から貰った金のネックレスだけは肌身離さず身につけていましたが、それ以外は決してつけようとしませんでした。特に指輪は嫌いらしく、特に年老いてからは、こんなに汚くなっちゃった手に指輪は似合わないとしょっちゅう言っていました。

なぜ手の話なんか・・・?母の意識がなくなる数日前のことでした。転倒して腰を痛めた状態だったのに、私は施設に一週間も母を預けてしまったのです。大学のスクーリングに出席するためでした。何かあったら必ず病院に連れていってくださいと、施設の職員にお願いをして出かけたのですが気が気ではありません。帰ってきたその足ですぐに施設に向かいました。母はすっかり弱っていて別人のようでした。窓から夕日が見えていたのを今でも思い出します。明日連れ帰ることになってはいるけれど、きょう連れ帰ったほうがいいかもしれないと思っていたら母が「早く帰りなさい。だんなさんが待ってるわよ、早く帰ってあげなさい」と、やせ細った手で私を追い払うしぐさをするのです。あの時の母の手・・・私はその手がどうしても忘れられないのです。一緒に連れて帰ってと、私の腕をきっと掴みたかっただろうに。そう思うといたたまれない気持ちになってしまいます。


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