お隣のお婆ちゃんの声が聞こえる

お隣のお婆ちゃん

2011年10月14日(金)

私の家は新興住宅地にあります。新興住宅地にありがちな狭い敷地ですから、時にお隣さんの話し声が聞こえてくることがあります。普段はなんということもなく自然にやり過ごしていますが、ここのお婆ちゃんというのがとてつもなく声の大きな方なんですね。お隣さんの台所のドアはジャロジー窓になっていますから、ちょっと暑い日などはここが開いていて、ただでさえ賑やかなお婆ちゃんの声がさらに大きく響いてきます。ギャハハ、ワハハと、それはそれは楽しそうです。

お隣さんの台所に一番近い位置にあるのが、母を介護していた部屋でした。窓を開けていると、お婆ちゃんの声がとてもよく聞こえる位置にありました。そんなある日、母が急に大声で「うるさい!」とお隣に向かって怒鳴りつけたのです。ものすごく大きな声でしたから、お隣さんに聞こえたのではないかとハラハラしました。近隣関係はうまくいっていますから、こじれるようなことになったらどうしようと思いましたが、幸い、その後も笑い声がひっきりなしに続き、どうやら聞こえていなかった様子。ほっとしました。

あの時の母の、とても暗くイライラした表情を今でも思い出すことがあります。感情の抑制が効かない、母の本来の性格がむき出しになったようで、その時は母に対して憎悪に近いものを感じましたが、でも、今思うんですね、母は自分の境遇に苛立っていたのではないかと。楽しく笑い続けるお婆ちゃんの声、その声に嫉妬を感じていたのかもわかりません。そういえば私の家に来て以来、母が心の底から笑っている顔を見たことがありませんでした。帯状疱疹の後遺症で痛む左腕、特別養護老人ホームという場所で週に何日も過ごさなければならなかった身の不遇。まさか自分が介護される身になろうとは・・・。あれほど陽気だった母から笑顔を奪ってしまったのは私だったのではないでしょうか。晩年は寂しさのあまり、一人部屋で泣いていたのかもしれません。


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